夕闇マヨエール

オタクが重箱の隅をつつくブログ

「ぼくたちは勉強ができない」にハマってしまったわたしたち

ぼくたちは勉強ができない」を徹底考察

今日は週間少年ジャンプに連載中の「ぼくたちは勉強ができない」について書きたいと思います。キャラクターやストーリーに触れていますので、未読の方はご注意下さい。

また、漫画における男女カップ論議や中身がおっさん目線な感想、週間少年ジャンプの考察(dis気味)が含まれておりますので、苦手な方は別記事をどうぞ。 

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ありきたりなラブコメに飽き飽きしていたわたしたち

この漫画の連載が始まった頃、私はラブコメに食傷気味だった(ちなみに最も好きなラブコメ漫画は「いちご100%」)。「伝説」になっているラブコメ漫画は数あれど、それらを超える可能性がある作品はもうない。そう思っていた。男女カプ脳である私は、どんな作品の中にでもフラグを探す事ができるし、特に萌えをあきらめるという心境でもなかったのである。

ゆるりとした両片想いといえば、「ボンボン坂高校演劇部」。<部長→正太郎くん→←?真琴さん>のやりとりが秀逸で、ギャグ漫画というジャンルにおさめるのは忍びない名作だ。「地獄先生ぬ~べ~」も、ぬ~べ~とゆきめさんの距離が近づいて行く部分は、本当に神がかり的。「ハイキュー!!」。はっきりとした描写はないものの、マネージャーである潔子さんや、やっちーの可能性は無限大。「銀魂」もキャラクターの個性がはっきりとしているから、まさに男女カプ大豊作(?)だ。王道ラブコメよりも、萌えられる漫画がある。これがジャンプファンのラブコメ漫画離れを加速させた要因の一つだ。

To LOVEる -とらぶる-」はジャンプの特異点

ブコメ漫画として大成するためには、3つほどクリアしなければならない条件がある。

  1. どのような場面においても上品さがあること
  2. 何故主人公が好かれるのかが明確であること
  3. 女の子全員が応援できる人であること

ブコメの場合、どうしても際どいシーンは避けられない。どんなに美しく見せようとしても、無理矢理な展開や演出ミス、作画や絵柄によっては、ただ過激なだけのページになってしまうことがある。「To LOVEる -とらぶる-」が何故伝説になっているのかというと、上記の3つに当てはまっているからだ。絵柄がさっぱりとしていてクセが少なく、何より愛らしい。主人公はいざというときには頼りになるし、女の子たちも思わず応援したくなるキャラクターばかりだ。

「週間少年ジャンプの限界ぎりぎりに挑戦する」という活気的なアイデアも一役買っている。「To LOVEる -とらぶる-」以降、あまりこれとしたラブコメ漫画が出ていないのは、上記の3つにあてはまる漫画がないからだ。「To LOVEる -とらぶる-」は特異点であって、他の漫画が真似できる要素はほぼないと言って良い。

そもそもラブコメ漫画とは元来、「いかに際どく描くか」ではない。ラブコメの王道を謳っているにも関わらず、「どれだけ極限に迫れるか」ばかりが目立つ作品が多い。キャラクターの中身をしっかりと描き、ストーリーに厚みを持たせなければ、作品としての読み応えは半減してしまう。「男性はラブコメが好き」という定説も、今はない。女性もキャラクターや展開によってはラブコメを読むし、ハマることもある。また、ラブコメ好きな男性の年齢層も、オタク文化の広がりによって際限がなくなった。

ぼくたちは勉強ができない」は王道のラブコメ

ぼくたちは勉強ができない」は、王道のラブコメに見えるかもしれない。しかし、読んでみれば違いは一目瞭然。まずは、絵があっさりしていながら丁寧なタッチで、とてもかわいらしい。「ラブコメ漫画の良し悪しの70パーセントは絵柄で決まる」と思っている私だが、多少のおはだけ描写などもすんなりと入ってくるから不思議だ。キャラクターの書き分けもきっちりされていて、好感が持てる。

シーンごとの見せ方も秀逸だ。登場人物の感情がストレートに伝わってくるコマ割とカメラアングル。ヒロインたちの登場回も、バランス良く描かれている。成幸が全員に対して平等に接していることの表れでもあるだろう。ラブコメでは、主人公がいわゆる「モテ王子」タイプであることが多いが、成幸はどちらかというと「非モテ王子」タイプ。もらうバレンタインチョコレートは義理ばかりなのに、修学旅行の夜の好きな人カミングアウト大会で一番名前が挙がるタイプである(?)。

「受験」という人生の岐路に焦点を置いているところも、この漫画の良いところ。ヒロインたちの家庭教師役を引き受けた成幸は、全員と真正面から向き合い、全力でサポートしている。この大切な時期に自分に対してまっすぐに向けられる気持ちは、誰だって無視できないものだ。成幸に自然と惹かれてしまうヒロインたちの気持ちにも頷ける。いわゆる「吊り橋効果」も働いているとすれば、受験が終わったとき、ヒロインたちにどのような想いが残るのか。とても楽しみだ。

多角的なキャラクターの作り込みに満点

「ぼくたちは~」が既存のラブコメと一線を画する部分は他にもある。キャラクターの作り込みだ。ほとんどのラブコメ漫画は、キャラクターに表裏がない。例えば「ぼくたちは~」であれば、「委員長タイプ」、「天然タイプ」、「体育会系タイプ」、「ツンデレタイプ」、「お姉さんタイプ」。いずれもそのまま言葉通りのキャラクターであることが多い。もちろん、表面的なキャラ付けだけでも魅力的な人間像を描くことはできる。ただ、ラブコメ漫画が出しつくされた感が否めない現在、求められているのは3次元的(人間的)ヒロインなのだ。

「ぼくたちは~」はキャラクターを360度作り込むことによって、人間としての厚みを持たせた。得手も不得手も、好きも嫌いも、光も闇もある。「天才」と呼ばれ一目置かれているヒロインたちが、すごく身近に感じられるのだ。髪型や服装、制服の着こなしなど、細部までこだわっているのが一目瞭然。ヒロインたちのバックヤードも奥深く、それぞれが受験以外にも悩みや不安を抱えている。

  • 一見「委員長タイプ」の緒方理珠は、天才であるが故に孤独であり、大好きなカードゲームを一人でプレイしていたりもする(しかも、めっちゃ弱い)。猪突猛進タイプで、見た目とは裏腹にしっかりと行動、発言する。人の感情を上手に汲み取れない自分をもどかしく感じている。自分から向けられる成幸への感情が、一番理解できていないようだ。
  • 一見「天然タイプ」の古橋文乃は、天才であるが故に家族との確執を抱えていて、星が好きだという一面を持っている。とある一つのコンプレックスが、結構根深かったりもする。料理は苦手だが、包容力は満点。成幸を巡っては、理珠とうるかの板挟みになってしまっている(胃薬が手放せない)。
  • 一見「体育会系タイプ」の武元うるかは、国体で優勝するなど、水泳の才能はずば抜けている。努力できる天才。成幸とは中学時代からの顔なじみ。家事全般が得意だが、おっちょこちょいな部分もあり、成幸の前では時々失敗してしまうことも。自分の夢のために英語を猛勉強中。成幸が好き。
  • 一見「ツンデレタイプ」に見える桐須真冬先生は、厳格な教師。教師と生徒の恋愛に断固反対しているものの、成幸にはついいつもの自分を見せてしまう可愛らしい一面も。フィギュアスケートをやっていた過去がある。妹がいるが、なかなかの変わり者。以前、理珠と文乃の家庭教師役をしたことがあるが、真面目で厳しすぎる故に断念。
  • 一見「お姉さんタイプ」に見える小美浪あすみは、メイド喫茶でアルバイトをしながら予備校に通っている苦学生。人当たりが良く面倒見が良い性格。見た目は小柄でベビーフェイスだが、時々辛らつな言葉を投げかける一面も。成幸も良くいじられている。ひょんなことからあすみの父に誤解されてしまい、成幸とは恋人同士を演じている。げっし類が苦手。

ぼくたちは勉強ができない」おすすめです

ヒロインたちに囲まれながら学生生活を送る成幸、さぞかし良い思いをするのだろう……と思いがち。もちろん、良い思いはたくさんしているのだが、それ以上に自分の睡眠時間を削ってでも勉強の準備をする成幸の努力に、頭が下がる。自分の勉強もあるのにすごい。努力しているからこそ、皆に好かれるのだろう、と納得が行くストーリーになっているのだ。 

サブキャラクターもクセがある人ばかりで、漫画ページを隅々までじっくり読み込める作品文乃を応援している「いばらの会」の猪森さんと鹿島さんはVtuber吟醸姉妹、ギンさんとお嬢さんに似ている(と勝手に思っている)。普通の勉強漫画としても読め、青春漫画としても充分、ラブコメ漫画としては充二分。某有名塾のような唯我先生の神授業も見られるという特典付き(?)。アニメ化も決まるなど、これからもっともっと注目されて行くであろう漫画だ。

いつ読むか……今でしょ!

 

最後まで読んで下さってありがとうございました!